第10章 営業能力開発ってなんだろう?
1 新人MRらしく―スキルの指南には乗らない
どの業界も営業能力開発が盛んに取り上げられており、書店のビジネス書コーナーには、この種の本がたくさん並んでいます。しかし、なかには新人MRにはふさわしくないものもあります。たとえば、相手にNOと言わせない営業テクニックとか、ネゴシエーション(交渉術)など、相手を操るノウハウ的なものは避けるべきです。
皆さんに提案します。
「新人MRである1年間は、テクニックやスキルに無関心でいましょう!」
MRという職制は特殊な営業職です。人の命に関わる医薬品を扱います。ほかの業界と違い、膨大な医学・薬学の知識がベースになければ務まりません。まずは知識の修得が最優先なのです。未熟な知識レベルでセリングスキルを習得することは好ましくありません。
前述のとおり、新人MRには「初々しさ」や「爽やかさ」という特権があります。これは、新人らしく真摯に仕事に取り組んでいるから、未熟な知識レベルであっても許容してあげよう、という意味なのです。
それにもかかわらず営業スキルに走ってしまうと、自ら「特権」を放棄することとなり、真摯さも失い、知識が乏しいただのズルい営業職になってしまいます。
自分の未熟な知識レベルを認識し、誠心誠意、仕事に取り組んでいれば「誠実」として人の心に映ります。ただし、いつまでも特権に甘えていてはなりません。日々知識を積み上げていくことが新人MRの責務なのです。
2 最初はOne wayでかまわない
(まずは製品知識の完璧な習得)
「最近の若いMRはみんな優秀だよね。でも…」という言い回しを聞くことがあります。最後の「でも…」はどういう意味なのでしょうか?
MRは知識はもちろんのこと、傾聴力、質問力、提案力も持ち合わせていなくてはなりません。ところが、最近のMRは自社製品の概要を一方的に説明するだけで、会話になっていないということです。先生方は「もっと