第8章 卸の訪問
1 医薬品の流通を知る
医療用医薬品の流通をみていきましょう(★)。一般的にメーカーにとって得意先は、自社製品を販売する卸です。しかし、医療用医薬品は専門性の高い情報を伴っていることが必然であることから、MRは医療機関や調剤薬局の先生方を直接訪問して情報提供活動をします。
MRという職制は、他の業種から見ると特異に映るようです。というのも、営業職でありながら自社製品を運ぶこともなく(一部直販もありますが)、また売上代金を回収することもなく、医薬情報の提供、収集、伝達だけが業務とされているからです。
この配達業務(供給)と売上代金回収業務は、すべて卸に任せています。この2つの業務までMRが担うとするならば、とても情報提供活動に専念できるとは思えません。当然のことですが、卸はメーカーから仕入れた価格(仕切価)から医療機関や調剤薬局へ販売した価格の差額(これを売差といいます)で利益を出し、さらにリベートやアロワンスといったメーカーからの割戻しもあります(★参照)。しかし、MRが情報提供活動に専念できることを、卸のMSさんに感謝する気持ちは持つべきだと思います。
医療用医薬品の供給には大きな責任があります。他の商品と違い、最終消費者が患者さんであるため、供給の遅延は許されません。供給の重要性を知ることが、医薬品の流通を知ることといっていいでしょう。
医療用医薬品は多種多品目であり、その在庫管理は大変です。冷蔵保存を必要とする医薬品や、使用期限の短い医薬品もあります。MRは包装変更や規格変更などの案内を、医療機関だけでなく、卸に迅速に伝えることを忘れてはなりません。
新人MRの皆さんは、実際に納入されている自社製品(現品)をほとんど見ていないのではないでしょうか。写真では見たことがあるとしても、現品を見ないと開封方法やどこにロット番号が記されているかピンとこないでしょう。
もっと自社製品の流通に関心を持ちましょう。そうすれば、MSさんに対する接し方も変わってくるはずです。自社製品の普及を支援してもらうことだけを考えるのではなく、MSさんに提供すべき情報を決して忘れないでください。
MRは担当しているエリアの医療機関や調剤薬局すべてを訪問することはできません。そこで、MSさんのサポートを借りることになります。MSさんにも、説明会などで自社品を知ってもらう機会が頻繁にあります。ただサポートのお願いをするだけでなく、卸の役割の重要性を認識し、MSさんの立場を考えた接し方を心がけましょう。
2 卸の機能
MSさんの業務は、主に配達業務と売上代金回収業務です。また、MRの情報提供活動のサポートをしてくれる場合もあります。
しかし、医療用医薬品卸売業の機能はもっと多岐にわたります。卸の機能について掘り下げてみましょう。
配送
医薬品に配達遅延は許されません。受注から即日、遅くとも翌日に納品することが原則です。メーカーへの発注から物流センターを経由して、受注→起伝→車載→納品の基本業務を滞ることなくこなしていかなくてはなりません。
保管と品質管理
卸の物流センターでは約1~2万種、各支店・営業所(デポ)では数千種の医薬品の在庫を管理します。温度管理が必要な医薬品や、めったに発注されない医薬品もあります。
特に大変なのは、