外科治療における治療効果の判定は、生存率で行います。生存率とは外科治療を行ったことにより、患者さんがどれくらい生きているかという割合のことです。手術後の、あるいは治療開始後の生存率を時間に対してプロットしたものを全生存率(overall survival,オーバーオールサバイバル)といい、この曲線を生存曲線と呼びます。生存曲線は、また、患者さんがどれくらい生きられるかを示しているので、overall survivalは生存期間ともいえます。たとえばスライドの左の図の青い色の生存曲線では生存率50%のところに位置する患者さんは5年間生きられるということがわかります。この全体の50%に相当する患者さんの生存期間を生存期間中央値(median survival,メディアンサバイバル)といいます。
ところが乳がんのように手術後に再発しても、長期生存が可能ながんもあります。このようながんの場合、再発した場合と再発しなかった場合の生存率や生存期間を同等に扱うと、正確な治療効果の判定が行えません。そのため生存率以外に無再発生存率も効果判定に用います。無再発生存率(relapse-free survival,リラプスフリーサバイバル)は再発を来さずに生存している人の割合です。再発した時点で患者さんを死亡したとみなして生存率の計算を行います。
治療効果の比較には5年生存率や生存期間中央値といった簡単に算出できる方法で行えばよく、わざわざ生存曲線を求める必要はないように一見思われます。スライド右側の図は2つの治療法の生存率を比較した模式図です。この二つの治療法は5年生存率や生存期間中央値は全く一緒ですが、明らかにAのほうが長生きしている患者さんが多いことがわかります。このように、治療法の比較にあたっては、生存曲線や無再発生存曲線を求めることが重要になります。