EGFRは、細胞膜を貫通する形で細胞膜表面に存在しており、細胞外領域、細胞膜貫通領域、細胞内領域の3つの部分から成り立っています。細胞外領域には上皮成長因子(EGF)などのリガンドが結合する部分があります。また、細胞内領域にはチロシン部分にリン酸基をつける働きを持つチロシンキナーゼ (TK) 部位が存在しています。TK活性部位が働くためには、リン酸基の供給源となるATPが必要です。
①細胞膜表面のEGFRの細胞外領域にEGFなどのリガンドが結合します。
②リガンドの結合したEGFは、2つの分子が結合した二量体をつくります。
③二量体化によりEGFRのTK活性部位にATPが結合して、それぞれのEGFRのTK活性化部位がリン酸化により活性化されるとともに、近傍のチロシン部分をリン酸化することによりシグナルを伝えます。
④TK活性部位のリン酸化によるシグナルは、いくつかの経路により伝達されます。そのうち主なものはMAPK経路、JAK-STAT経路、PI3K-AKT経路と呼ばれ、これを通したシグナル伝達により、アポトーシス停止や細胞増殖、血管新生などに関わる遺伝子の読み出しが行われます。
これらの経路はいくつかのタンパク質が関与しており、1つのタンパク質がリン酸化により活性化されると、これがその次(下流)のタンパク質をリン酸化するといったメカニズムにより、シグナル伝達が行われます。
EGFRが過剰に発現すると、このようなシグナル伝達が盛んに行われるため細胞が増殖します。cetuximabやpanitumumabなどEGFRをターゲットとした薬剤では、EGFRの過剰発現を免疫染色法などにより検査してから投与する必要があります。