細胞が分裂して成長する1サイクルを時計周りの円グラフで示したものを、細胞周期といいます。G1期、S期、G2期、M期の4期に分けられます。
G1期では、細胞が大きくなるために必要なたん白質の合成およびDNA合成の準備が行われます。S期ではDNAの合成、G2期では細胞分裂の準備が行われ、M期で細胞分裂が行われます。細胞周期の途中には、何ヵ所かチェックポイントが設けられています。たとえばG1後期には、DNAをつくるためのたん白質が正常にできているか、DNAが傷ついていないかなどをチェックするチェックポイントがあります。ここで大きな働きをしているのがp53たん白質で、DNAに傷がついている場合は修復します。DNAの修復が正常にできていない場合は、G1期からS期への移行を止めます。
G2期のチェックポイントでは、合成されたDNAが正常かどうかがチェックされます。合成が中途半端な場合や、正確にコピーされていない場合などは、アポトーシスが引き起こされます。M期では、染色体を引っ張る紡錘体や細胞内の骨格を作っているたん白質がチェックされます。放射線や抗がん剤で「がん細胞が死ぬ」のは、これらにより傷つけられたDNAや紡錘体がチェックポイントでチェックされ、アポトーシスが引き起こされるためです。
また、G1期は細胞周期の中で一番長い周期ですが、これが非常に長くなる場合があります。これをG0期と呼んでいます。G0期にある細胞は分裂を休止して、休眠状態にあります。人間の細胞の大半はそれほど増殖しませんので、人間のほとんどの細胞はG0期にあると考えていいでしょう。がん細胞は、このG0期が短くてすぐにG1期に入ってしまい、どんどん増殖してしまうという性質を持っています。