痛みに対する対処法は、WHO方式がん疼痛治療法による段階的鎮痛薬投与法が基本とされています。つまり、痛みを3段階に分けて鎮痛薬を選択します。第1段階の軽度の痛みに対しては、非オピオイドのアスピリンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などを用います。オピオイドとは麻薬のことです。がんの痛みが中程度、ないしは非オピオイド鎮痛薬であるNSAIDsなどが効かないときは、第2段階としてオピオイド鎮痛薬のうち効力の弱い弱オピオイドである、リン酸コデインを処方に加えます。がんの痛みが中程度から高度のときは、第3段階として鎮痛効果が強い強オピオイドであるモルヒネなどを用います。
ただし、日本人にはモルヒネの使用に対する強い抵抗感があり、欧米に比べるとモルヒネの使用量は”数分の1″しかありません。日本人がモルヒネに抵抗感を持つ理由の1つに、モルヒネの使用により麻薬中毒になるという誤解があります。モルヒネをふつうの状態で使用すると多幸感を生み出す方向に作用し、これは依存性が生じるため、モルヒネ中毒になります。しかし、痛みがある状態で使用した場合は、痛みを軽減する方向に働き、依存性が出てこないことが知られており、モルヒネを使用しても麻薬中毒にはならないというのが定説になっています。
日本ではホスピスの数は非常に少なく、末期のがん患者さんのケアは大半が一般の病院で行っているのが現状です。