がん化学療法に伴う下痢は、早発性と遅発性に分類されます。
早発性下痢は、抗がん剤の投与で消化管の副交感神経が刺激され、腸管の蠕動運動が亢進することにより起こるコリン作動性の下痢です。
仙痛や鼻汁、流涙、流涎などを伴うことが多いが、持続は短期間です。
遅発性下痢は、抗がん剤投与により腸管の粘膜が障害されて起こる腸管粘膜障害性の下痢で、粘膜の防御機能が低下しているため、感染を生じる可能性があります。
なお、遅発性下痢はGrade 1~2で腹痛や悪心・嘔吐、発熱、脱水などの随伴症状を伴わない単純性下痢と、Grade 3~4で随伴症状を伴う複雑性下痢に分けられます。
イリノテカンによる下痢には、小腸腸管と胆汁のアルカリ化が図られますが、その他の抗がん剤に対しては特に予防策はとられていません。
ただし、緩下剤の常用患者では、緩下剤の服用量を調節し、下痢を予防します。
Grade 3以上の下痢が発生した場合は、一旦休薬し、Grade 1~2に回復したら治療を再開します。
早発性下痢に対する治療としては、臭化ブチルスコポラミンや臭化メペンゾラートといった抗コリン薬を投与します。
早発性下痢は、速やかに軽快して、臨床的には問題とならないことが多く、一度、早発性下痢を起こした患者では、次回以降の投与時に抗コリン薬を予防投与することもあります。
遅発性下痢に対しては、発現時期、発現期間、排便回数、随伴症状などを調べ、単純性下痢か複雑性下痢のどちらに相当するかを判断します。
単純性下痢では、止瀉薬としてロペラミドを投与します。
複雑性下痢に対しては、入院管理下での治療が必要です。
止瀉薬投与のほか輸液などによる水分バランスの管理とともに、随伴症状に対する治療を行います。
発熱を伴うものや、1日以上下痢が持続するものは、感染合併を考慮して抗生物質の内服を行います。