がんの基礎トレーニング

がん化学療法入門(2)

抗がん剤の投与法

抗がん剤の投与経路にはどのようなものがありますか?

抗がん剤の投与法は、全身投与と局所投与に分けられます。

全身投与は一般的には静脈内投与と経口投与で行われていますが、静脈内投与としては末梢静脈からの投与のほか、中心静脈からの投与も行われます。

末梢静脈の投与は、長時間の治療では手が不自由になること、薬剤によっては血管炎を起こしやすいこと、頻回の治療では末梢ルートの確保が大変であることなどの難点があります。したがって、大腸がん化学療法のFOLFOX(フォルフォックス)やFOLFIRI(フォルフィリ)レジメン(regimen)など48時間に及ぶ長時間の治療や末梢静脈ルートの確保が難しい場合などでは、中心静脈からの投与が適当です。中心静脈投与では、鎖骨下静脈などから上大静脈にカテーテルを挿入し、リザーバーポートを薬剤の注入側に取り付け、皮下に埋め込みます。

静脈内投与は投与速度により、①注射器により一気に注入するワンショット静注あるいはボーラス投与(bolus injection)、②点滴により2時間程度の時間をかけて投与する点滴静注、③長時間の点滴あるいはリザーバーポートを用いて長時間薬剤を注入する持続静注(continuous infusion)があります。

経口投与は、外来治療を中心に用いられます。最近では、フッ化ピリミジン系や分子標的薬など、経口薬が増えてきています。

皮下投与は、リュープロレリンやゴセレリンといったLH-RHアナログのほか、インターフェロン-αで用いられます。

局所投与は、肝がんや頭頸部がんの治療に選択的動脈内投与が用いられるほか、がん性髄膜炎に髄腔内投与が、がん性胸膜炎に胸腔内投与が、がん性腹膜炎に腹腔内投与がそれぞれ用いられます。

このほか、表在性膀胱がんでは内視鏡手術(TURBT)の後にBCGなどを膀胱内に注入する膀胱内投与があります。

抗がん剤は単独で用いられるのですか?

がん化学療法は、1種類の薬剤を単独で用いたり、他の抗がん剤と併用する多剤併用療法によって行われます。また、手術後や手術前での併用、あるいは放射線療法との併用も広く行われています。

手術後に再発したり(再発例)、手術が不可能な進行例(切除不能例)には、病状が進まないよう、がんの増殖を抑制することを目的に多剤併用による抗がん剤を投与します。化学療法により完全にがんが消失する場合もありますが、がんを小さくしたり、増殖を遅らせる効果にも期待がもたれます。

抗がん剤と手術との併用では手術前に抗がん剤を使用する術前化学療法(ネオアジュバントケモセラピー)と手術後に抗がん剤を使用する術後補助化学療法(アジュバントケモセラピー)とがあります。

術前化学療法は、切除不能例に対しがんを縮小させ、切除をより完全にする、あるいはがん縮小により切除する範囲を小さくして、機能が損なわれることを少なくする(機能温存)ことを目的としています。また、手術によって進行がんの病巣を取り除いても、目に見えないがん細胞が体内のどこかに残っている可能性があるため、再発防止を目的に術後補助化学療法が行われます。がんの種類により有用性や適応が異なりますが、一般に術後補助療法のほうが多く行われています。

遠隔転移はないが、局所進展が高度のため切除不能の場合は、放射線照射が行われます。放射線照射と抗がん剤治療を併用する化学放射線療法(略称;ケモラジ)は、放射線感受性の増強や抗がん剤による抗腫瘍効果の上乗せを期待して行われます。がんによっては、病巣を縮小させ、切除不能が切除可能となる(ダウンステージング*1)、あるいはより完全な治癒切除を目的として手術前に化学放射線療法が行われています。

*1:化学療法や化学放射線療法により、切除不能な状態が切除可能になるなど、進行度(ステージ)が低くなることをいう。

なぜ多剤併用療法が行われるのですか?

がん化学療法では、一般に異なる種類の薬剤を組み合わせた多剤併用療法を行います。多剤併用療法は作用機序の異なる薬剤を組み合わせて、治療効果の向上を狙うことと、蓄積毒性や薬剤耐性を生じにくくする目的で行われます。

たとえば、ドキソルビシンやエピルビシンなどのアントラサイクリン系抗がん剤は、総投与量が一定量以上に達すると蓄積毒性により心毒性の発現頻度が高まります。そのため、投与が続行できなくなり、他の薬剤に替えざるを得なくなります。

また、ブレオマイシンは蓄積毒性により肺線維症の発現頻度が高まるため、総投与量が一定量以上に達すると投与中止となり、他の薬剤に変更となります。

一般に、抗がん剤が投与中止となるのは耐性によることが多く、耐性には最初から薬剤が効かない自然耐性のほか、治療途中から薬剤が効かなくなる獲得耐性の2種類の耐性が知られています。これらの耐性の出現にはさまざまな仕組みが知られています。

アントラサイクリン系抗がん剤では細胞外への排出増大による耐性が起こります。植物アルカロイドも同じメカニズムで耐性が起こるため、この両者は交差耐性を示すことがあります。

白金製剤では抱合による無毒化が増大することによって耐性が起こることが明らかにされています。

また、代謝拮抗剤などではターゲットとなる正常代謝産物の量や代謝酵素の量が増大することによる耐性が起こります。

このほか分子標的薬ではターゲットとなる分子の構造が変わり薬剤が結合できなくなったため、耐性が生じる場合が知られています。

多剤併用療法の組み合わせの原則は?

多剤併用療法では、用いる薬剤の数をむやみに多くしても毒性が増大するだけで有効性はそれほど上がらないことから、通常は2~3種類の薬剤を組み合わせて行われます。

多剤併用療法は次のような原則に基づいて行われます。

①作用メカニズムの異なる薬剤を組み合わせ、相乗効果を狙うとともに耐性による効果減弱の回避を図ります。

②副作用の種類がなるべく重ならないように組み合わせるとともに、発現時期も重ならないようにして重篤化を防ぎます。

③単剤投与時と多剤併用投与時では適切な投与量が異なります。通常、治療ごとに第Ⅰ相試験などの臨床試験が必要であり、それにより決められた至適スケジュールと、至適投与量に従って投与を行います。

④休薬期間が長すぎるとがん細胞が再増殖する可能性があるので、可能な限り短い期間で治療を繰り返して行います。

このような原則をもとにがん化学療法の治療計画であるレジメンが組み立てられます。多くのがんでさまざまなレジメンが比較検討され、効果、副作用などに優れるものが標準的なレジメンとして臨床で用いられています。

なお、レジメンは投与日、投与間隔を含んだ時系列的な治療計画を指しますが、これには抗がん剤のみならず、輸液、制吐剤などの支持療法も含まれます。

薬物療法はどのように行われるのですか?

抗がん剤による薬物療法(単剤あるいは多剤併用療法)は、1回だけの投与ではなく、病状が悪化したり、副作用などにより投薬ができなくなるまで何度も繰り返して行われます。また、1つの治療が中止されたのち、次の治療に移行し、いくつかの治療を継続して行うこともあります。つまり、ファーストライン(一次治療)、セカンドライン(二次治療)、サードライン(三次治療)、と呼ばれる治療が行われます。

最初に行う治療はファーストラインと呼ばれ、各がん腫別に標準治療薬とされている薬剤を用いた治療(単剤あるいは多剤併用)を行います。ファーストラインの治療が有効と判断されれば、治療を継続していきます。がん腫により、予め決められたコース数で終了する場合と、効果と副作用をみながらできるだけ長く行う場合とがあります。

ファーストラインの治療が無効となった場合、あるいは毒性で継続が難しくなった場合は中止します。全身状態や主要な臓器の機能が保たれていれば、別の薬剤による治療であるセカンドラインに移行します。セカンドラインによる治療が無効となった場合は、可能であればさらにサードラインの治療を行います。

がん腫によっては、セカンドライン、サードライン、といくつもの有用な治療法が確立されている場合もありますが、ファーストラインの治療すら確立していないがん腫もあります。後の治療ほど有効な薬剤は少なくなり、全身状態の悪化など化学療法の適応も難しいのが実情です。化学療法が難しい状況では、症状に応じた治療を行っていく緩和ケアを主体とした治療に移行していきます。

全身状態の悪化が早く、ファーストラインやセカンドラインの途中で緩和ケアへと移行せざるを得ない場合もしばしば起こります。

がん腫別の標準的な化学療法

胃がんの化学療法の対象は?

胃がんの主な治療法は外科治療ですが、化学療法は術後補助化学療法として、あるいは切除不能・再発例に対する治療として用いられます。

『胃癌治療ガイドライン』では、StageⅡ/Ⅲの胃がんの治癒切除例に対して、テガフール・ギメラシル・オテラシル(S-1)単剤、ならびにカペシタビン(Cape)+オキサリプラチン(OX)併用による術後補助化学療法が推奨されています。

切除不能例や非治癒切除例、再発例では、HER2の状況に応じたレジメンが推奨されています。HER2陰性例(HER2(-))ではS-1とシスプラチン(CDDP)の併用療法が推奨されており、HER2陽性例(HER2(+))ではCapeとCDDPおよびトラスツズマブ(Tmab)の併用療法が推奨されています。

胃がんの標準的な化学療法は?

胃がん術後補助化学療法としてのテガフール・ギメラシル・オテラシル(S-1)単剤投与では、80mg/㎡/日を4週間連日経口投与後、2週間休薬を1コースとして1年間実施するのが標準治療となっています。カペシタビン(Cape)+オキサリプラチン(OX)の併用では、Cape 2,000mg/㎡/日を第1日目から2週間経口投与し1週間休薬、OX 130mg/㎡を3週ごと、これを1サイクルとして8サイクル行います。

切除不能進行胃がんや再発胃がん、あるいは非治癒切除例に対してはHER2の状況により推奨レジメンが異なっています。

HER2陰性例では、S-1+シスプラチン(CDDP)療法が推奨されています。CDDPは第1週目ではなく第2週目(8日目)に60mg/㎡を投与します。また、S-1は80mg/㎡/日を3週間連日投与後、2週間休薬する5週1コースのレジメンとなっています。

HER2陽性例では、Cape+CDDP+トラスツズマブ(Tmab)療法が推奨されています。Tmab 6mg/㎡とCDDP 80mg/㎡は第1日目に投与しますが、初回治療ではTmab 8mg/㎡を1.5時間かけて点滴します。これはモノクローナル抗体に特有な副作用であるインフュージョン・リアクションを軽減するためです。Capeは2,000mg/㎡/日を第1日目から2週間経口投与し、1週間休薬する1コース3週のレジメンとなっています。

大腸がんの化学療法の対象は?

大腸がんも胃がんと同様に外科治療が主体となり、化学療法は術後補助療法、あるいは切除不能進行再発例が対象となります。

『大腸癌治療ガイドライン』では、StageⅢの大腸がんのR0(がんの遺残がない)切除例に対し、フッ化ピリミジン(FP)単独による補助化学療法が手術単独に比し予後改善効果があるとしています。しかしその再発抑制効果は、オキサリプラチン(OX)併用に劣るため、OXを併用した補助化学療法を強く推奨しています。

切除不能進行再発例に対しては、薬物療法の適応可否を、適応あり、問題あり、適応なしの3つに分けて判断しています。問題ありとは、全身状態や主要臓器機能、併存疾患等のため一次治療のOXやイリノテカン(IRI)、分子標的薬併用に対する忍容性に問題がある患者、適応なしは全身状態不良、主要臓器機能不全、重篤な併存疾患などを有する患者です。

薬物療法が適応可能と判断される患者には、一次治療開始前にRAS(KRAS/NRAS)遺伝子検査、BRAF遺伝子検査が実施され、Cmab、PmabはRAS遺伝子野生型のみの適応となります。

大腸がんの標準的な術後補助化学療法は?

『大腸癌治療ガイドライン』では、術後補助化学療法として本邦で保険診療可能ないくつかがあげられています。

CapeOX(カペオックス)療法は、オキサリプラチン(OX)130mg/㎡を2時間で点滴し、さらにカペシタビン(Cape)2,000mg/㎡/日を14日間連日経口投与し、1週間休薬するのを1コースとする方法です。OXの投与量は後述のFOLFOX療法より多く、Capeの投与量はCape単独投与療法より少なくなっています。なお、CapeOX療法はXELOX療法と呼ばれることもあります。

FOLFOX療法は、一般に進行・再発大腸がんに用いられている方法ですが、大腸がんの術後補助化学療法としても有用性が高いことから、術後補助化学療法としても推奨されています。FOLFOX療法にはいくつかの種類がありますが、これはFOLFOX4と呼ばれるレジメンです。

5-FU+LV療法は、レボホリナート(ℓ-LV)250mg/㎡を2時間で点滴し、ℓ-LV点滴開始1時間後にフルオロウラシル(5-FU)500mg/㎡を急速静注することを毎週繰り返す方法で、6週投与後2週間休薬するのを1コースとしています。この療法は投与法が開発された施設にちなんでRPMI(Roswell park memorial institute)法とも呼ばれています。

UFT+LV療法は、テガフール・ウラシル(UFT)300mg/㎡/日とホリナート(LV)75mg/㎡/日を28日間連日経口投与し、1週間休薬するのを1コースとする方法です。両薬剤とも経口投与であるため、外来投与が行いやすい方法です。

Cape単剤療法は、Cape 2,500mg/㎡/日を14日間連日経口投与し、1週間休薬するのを1コースとする方法で、こちらも外来投与が行いやすい方法です。

進行再発大腸がんの標準的な化学療法は? (1)

『大腸癌治療ガイドライン』では、切除不能進行大腸がんや再発大腸がんに対していくつかの治療法が推奨されています。

FOLFOX+Bmab療法では、第1日目にベバシズマブ(Bmab)5mg/kgを投与した後に、オキサリプラチン(OX)85mg/㎡とレボホリナート(ℓ-LV)100mg/㎡を2時間静注し、その後フルオロウラシル(5-FU)の400mg/㎡ bolus投与を行い、さらに5-FUの600mg/㎡を22時間持続静注します。第2日目にはℓ-LV静注、5-FUのbolus投与と持続静注を第1日目と同様に行い、これを2週毎に繰り返します。またKRAS遺伝子に変異のないKRAS野生型の症例では、FOLFOX療法前にセツキシマブ(Cmab)250mg/kg、あるいはパニツズマブ(Pmab)6mg/kgを投与するFOLFOX+Cmab/Pmab療法も推奨されています。

FOLFIRI+Bmab療法では、第1日目にBmab 5mg/kgを投与した後に、イリノテカン(IRI)180mg/㎡とℓ-LV 200mg/㎡を2時間静注し、さらに5-FUの400mg/㎡ bolus投与と2,400mg/㎡を46時間持続静注する方法です。FOLFOX+Bmab療法と異なり2日目のℓ-LVと5-FUのbolus投与が不要で、治療の簡便化が図られています。FOLFIRI+Bmab療法もFOLFOX+Bmab療法同様1コース2週のレジメンです。また、KRAS野生型の症例では、FOLFIRI+Cmab/Pmab療法も推奨されています。

ちなみに、FOLFIRI療法は、modified FOLFOX6(mFOLFOX6)療法と呼ばれる投与法におけるOXをIRIに替えた治療法です。

進行再発大腸がんの標準的な化学療法は? (2)

そのほかに、FOLFOX療法とFOLFIRI療法を合体させたFOLFOXIRI療法とCapeOXにベバシズマブ(Bmab)を加えた療法もファーストラインとして推奨されています。

FOLFOXIRI療法は、第1日目にイリノテカン(IRI)165mg/㎡を1時間静注後に、レボホリナート(ℓ-LV)200mg/㎡とオキサリプラチン(OX)85mg/㎡を2時間静注し、その後フルオロウラシル(5-FU)3,200mg/㎡を48時間持続静注する方法です。FOLFOXやFOLFIRIと異なり5-FUのbolus投与は行いませんが、これらと同様1コース2週のレジメンです。Bmabは5mg/kgを30分かけて点滴静注します。

CapeOXは、術後補助化学療法で推奨されていますが、進行・再発大腸がんでは、Bmab 7.5mg/kg投与後にCapeOX療法を行うCapeOX+Bmab療法も推奨されています。

肺がんの化学療法の対象は?

肺がんは進行性で見つかるケースが多く、手術可能例はさほど多くないため、化学療法が広く用いられます。『肺癌診療ガイドライン』では、小細胞がんと非小細胞がんに分け、これらの組織型別に病期、全身状態、年齢、遺伝子変異の有無などに応じた治療方針が示されています。

限局型小細胞肺がん(LD)の場合、病期Ⅰ~Ⅱの手術可能例以外は化学放射線療法が原則となり、化学療法はプラチナ製剤が中心となります。進展型小細胞肺がん(ED)には手術適応とはならず、全身状態、年齢によりシスプラチン+イリノテカン(PI)、シスプラチン+エトポシド(PE)、カルボプラチン+エトポシド(CE)、分割投与シスプラチン+エトポシド(SPE)などが選択されます。

非小細胞肺がんにおける治療は、可能であれば基本的に外科的切除が選択されます。同時に切除に際して、術前・術後に化学療法または放射線療法を加えることの可否も検討されます。『肺癌診療ガイドライン』では、臨床病期Ⅰ~Ⅱ期に対するテガフール・ウラシルによる術後補助化学療法の施行をエビデンスレベルAで推奨しています。

手術が適応とならない例については、切除不能局所進行性Ⅲ期で、全身状態良好(PS0~1)であれば、化学放射線療法が推奨されています。

Ⅳ期非小細胞肺がんへの化学療法は、近年のがん治療においても最も大きな変化が生じています。それを受け『肺癌診療ガイドライン』においても、サブグループ別の治療方針が採用されています。例えば、ドライバー遺伝子変異/転座陽性、PS0~1の患者に対する一次治療としては、それぞれの遺伝子変異/転座を標的とするキナーゼ阻害薬の使用が推奨されています。また、EGFR遺伝子変異やALK遺伝子転座のないPD-L1陽性細胞50%以上、全身状態良好の患者の一次治療としては、ペムブロリズマブ単剤あるいはプラチナ製剤併用+PD-1/PD-L1阻害薬。さらには、ドライバー遺伝子変異/転座陰性、PD-L1陽性細胞50%未満もしくは不明という患者には、プラチナ製剤と第三世代以降の細胞障害性抗がん剤の使用が勧められています。

小細胞肺がんの標準的な化学療法は?

小細胞肺がんは、ED(進展型)とLD(限局型)に分けられます。

ED(進展型)のPS0~2の70歳以下の症例のうち、シスプラチン(CDDP)一括投与が可能で、かつイリノテカン(IRI)投与が可能であれば、CDDP一括投与とIRIを併用するPI療法が推奨されています。

PI療法ではCDDP 60mg/㎡を第1日目にIRI 60mg/㎡を第1、8、15日目に投与し、これを4週毎に行います。

毒性が懸念されるためIRIの投与ができない場合は、CDDP一括投与とエトポシド(ETP)を併用するPE療法が推奨されています。PE療法ではCDDP 80mg/㎡を第1日目にETP 100mg/㎡を第1、2、3日目に投与し、これを3週毎に繰り返します。

PS0~2の症例で、CDDPの一括投与が不可能な場合や、75歳以上の症例、およびPS3の症例ではカルボプラチン(CBDCA)とETPを併用するCE療法や、CDDP分割投与とETPを併用するSPE療法が推奨されています。両者とも1コース4週のレジメンです。

CE療法では、CBDCA AUC=5を第1日目に、ETP 80mg/㎡を第1、2、3日目に投与します。

SPE療法では、CDDP 25mg/㎡とETP 80mg/㎡をそれぞれ第1、2、3日目に投与します。

LD(限局型)では、化学放射線治療が標準治療とされていますが、PE療法1コース目の第2日目から1日2回、45Gy(グレイ)/30回を3週間で行う加速過分割照射法との併用が推奨されています。この場合、PE療法は3~4週毎に行います。

Ⅰ~Ⅱ期の非小細胞肺がんの標準的な術後化学療法は?

『肺癌診療ガイドライン』では、術後化学療法の可否について検討が行われています。

上段は、病理病期ⅠA/ⅠB/ⅡA期の非小細胞肺がんに対する、テガフール・ウラシル(UFT)250mg/㎡/日1~2年間、連日経口投与による術後化学療法です。病変全体径2cm未満の腺がんの場合、推奨の強さ:1、エビデンスの強さ:A、総合評価:「行うことを強く推奨」とされました。一方、病変全体径が2cm以上の非腺がんに対しては、推奨の強さ:2、エビデンスの強さ:C、総合評価:「行うことを弱く推奨」とされました。

一方下段は、病理病期Ⅱ~ⅢA期完全切除例に対する、シスプラチン(CDDP)併用化学療法のレジメンです。CDDP+ビノレルビン(VNR)併用療法(NP療法)で、CDDP 80mg/㎡を第1日目に、VNR 25mg/㎡を第1、8日目にそれぞれ静注する1コース3週のレジメンを4コース行います。これについては、推奨の強さ:1、エビデンスの強さ:A、総合評価:「行うことを強く推奨」とされました。

さらにスライドにレジメンは示していませんが、EGFR遺伝子変異陽性の術後病理病期ⅠB~ⅢA期完全切除例に対するEGFRチロシンキナーゼ阻害薬治療については、推奨の強さ1、エビデンスの強さC、総合評価:「行わないことを強く推奨」という結果になっています。

Ⅲ期の非小細胞肺がんの標準的な化学療法は?

続いては非小細胞肺がんⅢ期の化学療法です。

切除不能局所進行性非小細胞肺がんについて、化学放射線にプラチナ製剤と第三世代以降の細胞障害性抗がん剤併用の可否を検討しています。放射線療法(胸部放射線治療)は、1日2Gy(グレイ)を週5日、計60Gy(6週間で30回)を照射。白金製剤を含む化学療法としては、カルボプラチン(CBDCA)+パクリタキセル(PTX)を併用したCP療法、シスプラチン(CDDP)+ドセタキセル(DTX)を併用したCD療法の2つです。

CP療法では、CBDCA AUC=2とPTX 40mg/㎡を第1、8、15、22、29、36日目にそれぞれ静注。CD療法では、CDDP 40mg/㎡とDTX 40mg/㎡を第1、8、29、36日目にそれぞれ静注となっています。

結論としてこの併用は、推奨の強さ:1、エビデンスの強さ:A、総合評価:「行うことを強く推奨」とされました。

『肺癌診療ガイドライン』では、免疫チェックポイント阻害薬を用いた地固め療法についても検討されています。同時化学放射線療法後、病勢が保たれている切除不能Ⅲ期小細胞肺がんに対するデュルバルマブによる地固め療法の効果をプラセボと比較したものです。OSなど詳細が未公表な部分がありますが、PFSは有意な延長を示しており、推奨の強さ:2、エビデンスの強さ:B、総合評価:「行うことを弱く推奨」という結果になっています。

Ⅳ期の非小細胞肺がんの標準的な化学療法は?(1)

がんの発生に関して直接的な原因となるような遺伝子の変異や転座が明らかになってきており、『肺癌診療ガイドライン』では、それらをドライバー遺伝子変異/転座と表現しています。分子標的薬にはその阻害を作用機序とするものが多いため、サブグループの1つにまとめ、患者ごとの標準的な治療方法を示しています。

ドライバー遺伝子変異/転座陽性が認められる全身状態良好のⅣ期非小細胞がん(非扁平上皮がん)患者に対する一次治療としては、それぞれの遺伝子変異/転座を標的とするキナーゼ阻害薬を使用します。

EGFR遺伝子変異陽性例には、ゲフィチニブ250mg/日、エルロチニブ150mg/日、アファチニブ40mg/日、オシメルチニブ(EGFRT790M変異陽性のみ)80mg/日のいずれかが推奨されています。

同様にALK遺伝子転座陽性例ではクリゾチニブ500mg/日、アレクチニブ600mg/日、セリチニブ750mg/日が、またROS1遺伝子転座陽性例ではクリゾチニブ500mg/日が推奨されています。

さらにBRAF遺伝子変異陽性例については、ダブラフェニブ300mg/日とトラメチニブ2mg/日の併用が推奨されています。

推奨の度合いは、推奨の強さ:1、エビデンスの強さ:A、総合評価:「行うことを強く推奨」になっています。

Ⅳ期の非小細胞肺がんの標準的な化学療法は?(2)

ドライバー遺伝子変異/転座のない、PD-L1陽性細胞50%以上、PS(パフォーマンスステイタス)0~1のⅣ期非小細胞肺がんに対する標準的な一次治療のレジメンです。

ペムブロリズマブ200mg/回30分点滴静注3週間間隔単剤投与をプラチナ製剤併用療法と比較した第Ⅲ相試験で、ペムブロリズマブはPFS(無増悪生存期間)、OS(全生存率)、ORR(全奏効率)とも有意に延長させました。またGrade3以上の毒性も有意に低いものでした。この結果を受けて『肺癌診療ガイドライン』では、推奨の強さ:1、エビデンスの強さ:B、総合評価:「行うことを強く推奨」で、ペムブロリズマブ単剤投与を推奨しています。ただし、同剤はGrade3以上に及ぶ免疫関連毒性が9.7%という報告がなされており、その管理に注意を喚起しています。

また、プラチナ併用療法へのペムブロリズマブの上乗せ療法においても、PFS、OSの有意な延長が示されました。これによりガイドラインは、PD-L1陽性細胞50%以上のⅣ期非小細胞肺がん(EGFR遺伝子変異陰性およびALK遺伝子転座陰性)の全身状態良好の患者には、プラチナ製剤併用療法+PD-1/PD-L1阻害薬を行うよう勧めています。ただし、これはペムブロリズマブ単剤と比較したデータではなく、同剤単独療法より優れていたかどうかは不明であるとしています。

Ⅳ期の非小細胞肺がんの標準的な化学療法は?(3)

ドライバー遺伝子変異/転座のない、PD-L1陽性細胞50%未満もしくは不明、PS(パフォーマンスステイタス)0~1、75歳未満のⅣ期非小細胞肺がんに対する標準的な一次治療のレジメンです。

メタアナリシスによって、プラチナ製剤を含む治療が、緩和治療に比して有意に生存期間延長に寄与することが明らかになっています。それに基づき『肺癌診療ガイドライン』では、プラチナ製剤と第三世代以降の細胞障害性抗がん薬の併用を推奨しています。

いくつかの薬剤は特定の組織型に対してのみ有効性が示されており、組織型により薬剤の組み合わせが異なります。上段はシスプラチン(CDDP)75mg/㎡とペメトレキセド(PEM)500mg/㎡を組み合わせたもので、非扁平上皮がんでの投与が推奨されています。これはPEMが、非扁平上皮がんに対して特異的に有効性を示すとされるためです。

一方下段は、ネダプラチン(NDP)100mg/㎡とドセタキセル(DTX)60mg/㎡が組み合わされています。このレジメンは扁平上皮がんに対して勧められるもので、その役割はNDPが担っているとされます。

これらは、各組織型に対し推奨の強さ:1、エビデンスの強さ:Aで、総合評価:「行うよう強く推奨」されるレジメンとなっています。

乳がんの薬物療法の対象は?

乳がんはホルモン依存性という特徴から、薬物治療にはホルモン製剤が多用されます。このため、他の領域と異なり、内分泌療法を抗がん薬による化学療法と区別する考え方が一般的です。

その乳がんは、ホルモンとともに、HER2遺伝子増幅にも依存するため、『乳癌診療ガイドライン』では、ホルモン受容体(ER・PgR)感受性や閉経状況、遺伝子増幅の有無などを指標にして治療方針が立てられています。

手術可能な乳がんに対しては、ER・PgR陽性の場合、術後化学療法としてホルモン製剤を使用します。その選択は閉経前か後かによって異なってきます。また、抗HRE2薬の登場によって、術前・術後の化学療法との併用も行われるようになっています。

転移・再発乳がんに関しては、本邦の『乳癌診療ガイドライン』に定義の変更がみられます。以前は転移・再発後の一次内分泌療法を「StageⅣ乳癌および周術期に内分泌療法未使用の乳癌あるいは術後内分泌療法終了後12ヵ月以上経過した再発乳癌に対する初回の内分泌療法」、さらに二次内分泌療法を「一次内分泌療法中および治療後の増悪あるいは周術期に内分泌療法投与中あるいは終了後12ヵ月以内に再発した最初の内分泌療法」と定義していました。

2018年からは、ASCO等国際的なガイドラインとの整合性を考え、転移・再発後最初に行う内分泌療法は、再発時期にかかわらずすべて「一次内分泌療法」、その次に施行するものを「二次内分泌療法」と呼ぶようになっています。この考え方は、化学療法にも適用されています。

ER・PgR陽性乳がんの標準的な術後補助化学療法は?

『乳癌診療ガイドライン』ではまず、ホルモン受容体陽性〔EG・PgR(+)〕乳がんの術後補助化学療法について言及しています。その標準治療は閉経前と閉経後で異なります。

閉経前の症例に対しては、タモキシフェン(TAM)20mg/日経口を5年間投与することが推奨されています。推奨の強さは1、「行うことを強く推奨する」です。

閉経後の症例に対しては、アロマターゼ阻害薬(AI)を強く推奨しています。AIはTAMとの比較において、DFS(無病生存期間)の改善が認められ、統計学的な有意差はなかったものの、OS(全生存期間)に優れる傾向がありました。具体的な製剤としては、アナストロゾール1mg/日、レトロゾール2.5mg/日、エキセメスタン25mg/日のいずれかになります。こちらも推奨の強さは1です。

何らかの理由で閉経後の術後補助化学療法にAIが使用できず、TAMで治療を始めた患者に対しては、DFS、OSの延長が認められたことから、TAM2~3年投与後にAIに変更し計5年間投与することが勧められてています。また、AIが使用しにくい患者に対しては、TAMあるいはトレミフェン(TOR)40mg/日が勧められています。これらの推奨の強さは2、「行うことを弱く推奨する」です。

HER2陽性乳がんの標準的な術前・術後補助化学療法は?

HER2陽性乳がんは化学療法に対する感受性が高く、術前化学療法の適応となる症例は少なくありません。なかでも抗HER2療法と化学療法の併用は、高い確率でpCR(病理学的完全奏効)を獲得することが知られています。トラスツズマブ(Tmab)については、至適投与期間1年とされており、術前化学療法に併用する場合は、術後も継続して投与される例が多くなります。『乳癌診療ガイドライン』でも、推奨の強さ1で「pCR率を上昇させることができるため、強く推奨する」となっています。

一方HER2乳がんの術後補助化学療法にTmabを追加することの目的は、再発率を低下させられるかどうかです。早期乳がんにおいて、術後化学療法単独と、Tmab併用を比較したメタアナリシスから、術後Tmabの益と害を定量的に、適応や投与期間を定性的に検討した結果、『乳癌診療ガイドライン』は「行うことを強く推奨する」としています。

スライドに示すのはTCH療法です。第1日目にTmab 8mg/kg、カルボプラチン(CBDCA)AUC=6、ドセタキセル(DTX)75mg/m2を投与、以後第8日、第15日にTmab 6mg/kgを追加、これを3週ごとに6コース繰り返した後、Tmab6mg/kgを3週ごとに11回投与するものです。

閉経前ER・PgR陽性転移・再発乳がんの一次化学療法は?

閉経前ホルモン受容体陽性の転移・再発乳がんの一次治療としては、生命に差し迫った危険がない場合、身体侵襲の度合いから、ホルモン製剤による内分泌療法が選択されます。

具体的には、LH-RHアナログのゴセレリン(ZOL)3.6mgまたはリュープロレリン(LPR)3.75mg皮下注にタモキシフェン(TAM)20mg/日経口を加え、4週間繰り返します。LH-RHアナログの徐放性剤を用いる場合は、ZOL10.8mgまたはLPR11.25mgを12週ごとに繰り返します。

この治療法について『乳癌診療ガイドライン』は、推奨の強さ1で「行うことを強く推奨」しており、卵巣機能の抑制を図るため両側卵巣摘出も考慮すべきとしています。

さらには、閉経後ホルモン受容体陽性転移・再発乳がんと同様の一次療法、すなわちLR-RHアナログや両側卵巣摘出に、アロマターゼ阻害薬(AI)や分子標的薬パルボシクリブ(PAL)を加えた治療についても、推奨の強さ2で、「行うことを弱く推奨」しています。

閉経後ER・PgR陽性転移・再発乳がんの一次化学療法は?

閉経後ホルモン受容体陽性の転移・再発乳がんに対しては、生命を脅かす病変がない場合、病状コントロールと延命効果に期待した薬物療法として内分泌療法が推奨されます。化学療法に比してより副作用が少ないことがその理由です。

『乳癌診療ガイドライン』における転移・再発に対する一次内分泌療法については、定義が改められています。ここではわかりやすくするために、周術期に内分泌療法を施行しなかったケースをもとに推奨されるレジメンを示します。

閉経後のホルモン受容体陽性転移・再発例に対しては、アロマターゼ阻害薬(AI)がタモキシフェン(TAM)に比し、有意にOS(全生存期間)を延長することが明らかになっています。『乳癌診療ガイドライン』では、AI単剤治療を推奨の強さ1で、「行うことを強く推奨する」としています。

加えて複数のメタアナリシスの結果から、AI+サイクリン依存性キナーゼ4/6阻害薬(CDK4/6i)パルボシクリブ(PAL)の併用療法についても検討しています。AI単独との比較において、PFS(無増悪生存期間)、ORR(全奏効率)、CBR(臨床的有用率)のいずれも併用群の方が良好でした。一方で、Grade3以上の有害事象は併用群で有意に多かったのですが、益と害のバランスを考慮し、同ガイドラインではAI+CDK4/6iの併用については推奨の強さ1で「行うことを強く推奨」しています。

さらに第三世代AIであるアナストロゾール(ANA)1mg経口と抗エストロゲン薬フルベストラント(FUL)500mg筋注の比較も検討されています。結果はPFSおよびTTP(無増悪期間)がFULで良好であり、筋注製剤という服薬コンプライアンスも考慮し、FUL単剤療法も推奨の強さ1で「行うことを強く推奨する」としています。

ER・PgR陽性、HER2陰性転移・再発乳がんの一次化学療法は?

転移・再発乳がんの主な治療目的は生存期間の延長とQOLの改善です。ER陽性HER2陰性転移・再発乳がんにおける再発後の予後因子として、再発までの無病生存期間、再発部位(内臓転移の状況等)や内分泌療法感受性などがあり、これらをもとに一次療法の治療薬が選択されます。

転移・再発乳がんに対する一次治療として、内分泌療法と化学療法を比較したランダム化試験のOS(全生存期間)、ORR(全奏効率)についてのメタアナリシスが行われています。その結果はOSに差は認められず、ORRも同等というものでした。対して副作用は、嘔気、嘔吐、脱毛などがいずれも化学療法群で有意に高まっていました。

これらをもとに『乳癌診療ガイドライン』では、益と害のバランスから、基本的には内分泌療法を行うよう推奨しています。その一方で、両群を比較したランダム化試験はいずれも古い年代のものであり、現在の治療体系には合致していないとも指摘しています。そのうえで、急速な病状進行や高度の全身転移などがみられた場合、速やかな腫瘍量の制御を目的とした化学療法を行うことを推奨しています。

ER・PgR陽性、HER2陽性転移・再発乳がんの一次化学療法は?

『乳癌診療ガイドライン』における、HER2陽性転移・再発乳がんに対する「一次治療」の定義は、再発時期にかかわらず、転移・再発後に「最初に行う治療」です。一次治療で推奨されるレジメンを決めるための因子として、周術期治療の内容と転移・再発までの期間(treatment free interval)が重要になります。

HER2陽性手術不能または転移・再発乳がんに対する一次治療として、ペルツズマブ(PER)+トラスツズマブ(Tmab)+ドセタキセル(DTX)とプラセボ+Tmab+DTXの二重盲検ランダム化第Ⅲ相試験が行われています。それによればPER群対プラセボ群は、奏効率80%対69%、PFS(無増悪生存期間)18.7ヵ月対12.4ヵ月、OS(全生存期間)56.5ヵ月対40.8ヵ月という結果になっていました。Grade3以上の有害事象については、好中球減少53%対51%、発熱性好中球減少症13%対7%、下痢68%対48%でした。両群を比較した試験は1つだけ(CLEOPATRA試験)だけですが、『乳癌診療ガイドライン』では、この3剤併用療法をER・PgR陽性HER2陽性転移・再発乳がんの一次化学療法として推奨の強さ1で「行うよう強く推奨」しています。

また、ランダム化比較試験ではないものの、PER+Tmab+パクリタキセル(PTX)の第Ⅱ相試験においてPFS19.5ヵ月という結果が示されており、有害事象として発熱性好中球減少症を認めませんでした。この結果から『乳癌診療ガイドライン』は、PER+Tmab+PTXをPER+Tmab+DTXの代替可能なオプションと位置づけています。

肝がんの化学療法の対象は?

肝細胞がんは『肝癌診療ガイドライン』によって治療のアルゴリズムが定められています。治療方法の決定に関わるのは、肝予備能の程度、肝外転移の有無、脈管侵襲の度合い、腫瘍の数、腫瘍の大きさ(径)の5つの因子です。

薬物治療の対象となるのは、基本的にChild-Pugh分類A、Bであり、Cの場合は移植あるいは緩和ケアとなります。その薬物治療はソラフェニブが中心で、進行肝細胞がんに対するプラセボとの二重盲検ランダム化比較試験において生命予後改善が示されて以来、同剤単独療法が標準治療となっています。その後、さまざまな分子標的薬がソラフェニブと比較検討されていますが、優越性、非劣性を示すことができたものは多くありません。

『肝癌診療ガイドライン』では、全身状態良好、Child-Pugh分類Aの切除不能進行肝細胞がんに対して、ソラフェニブ(またはレンバチニブ)を強く推奨しています。レジメンはソラフェニブの場合、800mg/日を分2経口投与します。

これとは別に肝動注化学療法も、脈管侵襲例を中心に実臨床では広く行われています。プラセボとの比較がないためエビデンスレベルは高くはなく、『肝癌診療ガイドライン』では、「切除不能進行肝細胞がんに対して弱く推奨する」となっています。

その他の各がん腫別の代表的な化学療法は? (1)

そのほかのがんについても、各種ガイドラインで化学療法が推奨されています。まず、胆道がん、膵がん、食道がん、頭頸部がんです*1。

切除不能の胆道がんの一次治療における化学療法としては、ゲムシタビンとシスプラチン併用療法が推奨されています。

膵がんの術後補助化学療法としてテガフール・ギメラシル・オテラシルが推奨されています。局所進行切除不能例に対する一次治療としては、化学放射線療法で、フッ化ピリミジン系またはゲムシタビンが推奨されています。遠隔転移あるいは局所進行の切除不能膵がんでは、FOLFIRINOX療法(大腸がんにおけるFOLFOXIRI療法と同じ)、ゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用療法が推奨され、これらの治療法が適切と判断されない場合は、ゲムシタビン+エルロチニブ併用、ゲムシタビン単剤、テガフール・ギメラシル・オテラシル単剤治療が推奨されています。

食道がんでは、切除可能なStageⅡ・Ⅲ胸部食道がん症例に対しシスプラチン+フルオロウラシルによる術前化学療法がグレードBで勧められています。また、早期がんと遠隔転移を有する症例を除いた外科的治療を行わない症例には、シスプラチン+フルオロウラシルを用いた根治的同時併用化学放射線療法が推奨されています。

頭頸部がんでは頭頸部扁平上皮がんの再発高リスク群に対する術後補助療法として、シスプラチンを放射線療法と同時併用することがグレードAで勧められています。また、根治切除不能な局所進行頭頸部扁平上皮がんに対する抗PD-1抗体については、グレードBで推奨しています。

*1:『胆道癌診療ガイドライン2014』『膵癌診療ガイドライン2016』『食道癌診療ガイドライン2017』『頭頸部癌診療ガイドライン2018』

その他の各がん腫別の代表的な化学療法は? (2)

続いて腎がん、膀胱がん、前立腺がんのガイドラインです*1。

MSKCC分類favorable(低リスク)、intermediate(中リスク)の淡明細胞型腎細胞がんの一次治療として、スニチニブ、パゾパニブがグレードAで推奨されています。また、MSKCC分類poor(高リスク)の淡明細胞型腎細胞がんには、グレードBとしてテムシロリムスとスニチニブが推奨されています。

表在性(非浸潤性)膀胱がんの経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)では、術後補助療法としてBCG膀胱内注入が行われます。また、筋層浸潤性膀胱がんに対する周術期化学療法としては、シスプラチンを含む術前化学療法が標準治療となっています。転移・再発膀胱がんに対して施行されるM-VAC療法とGC療法は、治療効果は同等ですが毒性のプロファイルからGC療法がfirst lineになっています。

去勢抵抗性前立腺がんに対する治療としては、ドセタキセル70~75mg/㎡3週間ごと+プレドニゾロン10mg連日の併用が推奨されています。また、エンザルタミドもドセタキセル治療後の患者に対するOSをプラセボに比し有意に延長します。転移のある去勢抵抗性前立腺がんへは、アビラテロン+プレドニゾロンの併用が推奨されています。

*1:『腎癌診療ガイドライン2017』『膀胱癌診療ガイドライン2015』『前立腺癌診療ガイドライン2018』

その他の各がん腫別の代表的な化学療法は? (3)

さらに子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がんのガイドラインです*1。

子宮頸がんの術後補助療法としては、再発高リスク群に対する同時化学放射線療法がグレードBで推奨されています。用いる薬剤はシスプラチン+フルオロウラシルです。再発がんに対する全身化学療法としては、プラチナを含む2剤併用療法、ベバシズマブを含むレジメンが、いずれもグレードBで推奨されています。

子宮体がんの術後補助療法としては、ドキソルビシン+シスプラチンの併用療法がグレードBで推奨されています。切除不能または残存病巣を有する進行再発がんに対しても、やはりグレードBでドキソルビシン+シスプラチンの併用が推奨されています。

卵巣がんに対しては、初回化学療法としてパクリタキセル+シスプラチンあるいはパクリタキセル+カルボプラチンの併用がグレードAで勧められています。Disease free interval(DFI)が6ヵ月未満の再発では、前回と交差耐性のない薬剤の単独療法が、DFIが6ヵ月以上の再発ではプラチナ製剤を含む多剤併用が、グレードAで推奨されています。

*1:『子宮頸癌診療ガイドライン2017』『子宮体癌診療ガイドライン2018』『卵巣がん診療ガイドライン2015』

その他の各がん腫別の代表的な化学療法は? (4)

最後に造血管腫瘍について*1。

白血病にはさまざまな化学療法剤が用いられます。急性骨髄性白血病では寛解導入療法として若年者では標準量シタラビン+イダルビシン併用療法や標準量シタラビン+高用量ダウノルビシン併用療法が推奨されています。また、高齢者の寛解導入療法では、シタラビン+ダウノルビシンやエノシタビン+ダウノルビシンが勧められています。さらに、その後の地固め療法には若年者では大量シタラビン単剤を用いることが勧められていますが、高齢者では標準的寛解後療法は確立されていません。また、維持療法の有用性は明らかではないとされています。

急性リンパ性白血病では、フィラデルフィア(Ph)染色体陽性の場合はイマチニブ併用による寛解導入療法が勧められています。Ph染色体陰性の場合は標準的治療は確立されていません。

慢性骨髄性白血病の慢性期では、チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)であるイマチニブ、ニロチニブ、ダサチニブのいずれか一つによる単剤療法が推奨されています。また、進行期でもTKIが勧められています。

悪性リンパ腫のうちホジキンリンパ腫にはドキソルビシン+ブレオマイシン+ビンブラスチン+ダカルバジン併用療法であるABVD療法が勧められています。また、非ホジキンリンパ腫に対しては、リツキシマブを含む療法であるR-CHOP療法(リツキシマブ+シクロホスファミド+ドキソルビシン+ビンクリスチン+プレドニゾロン)やR-CVP療法(リツキシマブ+シクロホスファミド+ビンクリスチン+プレドニゾロン)が推奨されています。

*1:『造血器腫瘍診療ガイドライン2018』


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