肺毒性は、間質性肺炎や肺線維症がもともと存在している患者で発生しやすいことが知られています。
このほか、高齢者、喫煙者、腎障害合併例、肺への放射線照射歴のある患者で発生リスクが高まることが知られており、これらの高リスク患者では慎重投与が必要です。
このような高リスク患者では、投与前および投与中に胸部X線写真や胸部CT(HRCT)像をとり、KL-6、SP-Dなどの血液検査を行うほか、咳(ときに乾性)や呼吸困難などの症状がないかを確認します。
肺毒性(薬剤性肺障害)が疑われる場合は、さらに細かい臨床検査を付け加えるとともに感染症などとの鑑別診断のための検査を行い、気管支内視鏡を用いた気管支肺胞洗浄(BAL)や経気管支肺生検により得られた標本による肺病理所見検査結果をもとに鑑別診断を行います。
なお、スライド中の各略号は以下のことを示しています。
HRCT(高分解能CT)は薄層CTともいい、通常のCT検査よりも薄い(1~2mm)人体断面の病変を描出できる性能をもった高性能のCT。
肺がんや間質性肺炎などの診断に有効な機器です。
KL-6(シアル化糖鎖抗原)はヒト肺腺がんに対してつくられた単クローン性抗体が認識するシアル化糖鎖抗原の1つで、正常なⅠ型肺胞上皮細胞や気管支腺細胞でも産生され、間質性肺炎患者の血中で増加します。
SP-A、D(サーファクタントプロテインA、D)はⅡ型肺胞上皮細胞で産生されるリン脂質-タンパク複合体で、間質性肺炎患者の血中で増加します。
DLST(リンパ球刺激試験)はリンパ球の免疫機能を調べる検査。
ヒトリンパ球を薬疹の原因と想定される薬剤の共存下で培養すると活性化が生じ、サイトカインや免疫グロブリンの産生が亢進します。
この際の放射性チミジンの取り込みを検出するものです。
BAL(気管支肺胞洗浄)は気管支鏡を介して、気管支内に生理食塩水を注入し、肺胞や末梢気道を洗浄、その回収液の細胞成分や液性成分を解析する方法です。