免疫学の基礎トレーニング③ 適応(獲得)免疫系

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免疫学の基礎トレーニング③ 適応(獲得)免疫系

適応(獲得)免疫系では、特に体液性免疫に基づく生体防御の実際を学習します。リンパ球の成熟について、胸腺や脾臓、リンパ節の機能などをもとに、生成から機能発現までの流れも追います。

抗体である免疫グロブリンが異物をどう排除するのか、補体やサイトカインとはどう協力し合うのか、免疫応答の終わらせ方はどうなっているのか、具体的な仕組みを確認しましょう。

確 認-『自然免疫系』のまとめ

はじめに自然免疫系の作用についてまとめておきます。細菌などの異物が体内に侵入した際に起こる反応を、経時的に表示しています。

第Ⅰ章リンパ球の生成から成熟までを理解しよう

リンパ系前駆細胞から分化するリンパ球は適応(獲得)免疫の主役であり、各細胞がそれぞれの特性を生かしながら協力し合って異物の排除にあたります。

第Ⅰ章では、リンパ球成熟までのストーリーをみてみます。骨髄を出てすぐに機能を発揮しはじめる顆粒球や単球とは異なり、リンパ球はさらに別の臓器で成長を遂げます。その詳細を把握しましょう。

自然リンパ球とは

リンパ球にはB細胞、T細胞、NK細胞があります。このうち、B細胞とT細胞は適応(獲得)免疫、NK細胞は自然免疫に属しています。近年そこに、新しい知見が加わりました。

自然リンパ球(Innate Lymphoid Cell:ILC)は、2010年頃に発見された細胞です。リンパ球でありながら、抗原を認識するB細胞受容体(B Cell Receptor:BCR)やT細胞受容体(T Cell Receptor:TCR)をもたず、抗原特異的な作用は果たしません。その代わりILCは、さまざまなサイトカインを産生するという特徴を有しています。

一次リンパ組織、二次リンパ組織

リンパ組織は、免疫反応を担うリンパ球が分化・増殖し、機能を発現していく場を指します。

主要な一次リンパ組織は骨髄で、B細胞はここで成熟します。一方T細胞は、骨髄ではなく胸腺で成熟します。T細胞にとっては胸腺が一次リンパ組織です。

一次リンパ組織で成熟したリンパ球は、末梢血に乗って体内を循環します。そして二次リンパ組織に移動していきます。具体的には脾臓や頸部、腋窩、鼠径部などのリンパ節などが該当します。

二次リンパ組織は、異物に対する特異的免疫反応の場です。脾臓は血行性、リンパ節はリンパ行性です。また、粘膜から直接侵入した抗原に対する防御にあたるリンパ小節もあります。

T細胞が成熟する胸腺ー正の選択

ナイーブT細胞は樹状細胞の抗原提示を受ける際、あらかじめもつ共受容体CD4かCD8で結合します。それを決める場所が胸腺です。

未熟T細胞は胸腺の皮質で増殖します。増殖前のT細胞は共受容体をもっておらず、ここでの遺伝子再編成により、CD4とCD8双方をもつT細胞(Double Positive:DP)が出現します。

TCRには多くのパターンがあり、結合可能な抗原は無数に及びます。そこにまず、胸腺上皮細胞が主要組織適合遺伝子複合体(Major Histocompatibility Complex:MHC)の上に自己の抗原を乗せてT細胞に結合を試みます。そしてこの時結合できないものが除かれます。胸腺上皮細胞はMHCクラスⅠ分子とクラスⅡ分子をもつため、結果的に緩やかに結合できる、CD4をもつT細胞とCD8をもつT細胞(Single Positive:SP)が残ります。これを正の選択といいます。

T細胞が成熟する胸腺ー負の選択

次いでSPは髄質に移動し、胸腺樹状細胞の抗原提示を受けます。提示されるのは自己抗体ですが、ここでは認識せず無視できるかどうかが問われます。強く結合してしまうT細胞は排除されることになります。これを負の選択といいます。

こうして自己のMHCを認識でき、自己の抗原に反応しない、CD4かCD8をもつものが生き残ります。

リンパ球が通るリンパ管

胸腺を出たナイーブT細胞は血中に流入しますが、血中だけにとどまってはいません。毛細血管から組織液に含まれて漏出し、リンパ管に流入します。

末梢のリンパ管は動脈と反対方向、つまり体の中心側に向かって流れていきます。リンパ管にはT細胞だけでなく、B細胞や組織中のマクロファージ、樹状細胞も流入し、次第にリンパ本幹という管に合流します。そして最後は、鎖骨下静脈という太い静脈に注ぎ込まれます。

血管は心臓から心臓に戻りますが、リンパ管は一方通行です。管の中には逆流を防ぐ弁も設けられています。この流れに沿ってリンパ液は、末梢から中枢、静脈から血流、という形で、常に体内を循環しています。さらにそのリンパ管には、所々に中継地点のようなリンパ節が存在しています。

B細胞とT細胞が存在するリンパ節

リンパ節は頸部、腋窩部、鼠径部等に存在し、リンパ液が注ぎ込まれる輸入リンパ管と送り出される輸出リンパ管をもちます。内部はいくつかの部屋に分かれており、皮質にはB細胞、傍皮質にはT細胞というように、場所による細胞の偏りがみられます。

ナイーブB細胞は、濾胞性ヘルパーT細胞(Tfh細胞)の刺激によって分化が促されますが、行われるのが胚中心です。分化した形質細胞は、髄質に集まります。

リンパ節の機能は大別して2つ。まずリンパ行性に流れてきた異物の処理で、自然免疫としてのマクロファージの貪食、細胞性免疫としてのヘルパーT細胞刺激、それらが同時に起こります。もう1つは、樹状細胞による抗原提示。局所で異物を貪食した樹状細胞は、それを提示するためにリンパ節に赴く役割を負っています。

リンパ球は絶えず体内を循環していますが、動物が帰巣するようにリンパ節に戻ってきます(ホーミング)。その意味では、機能からいえば部隊が駐屯する関所ともいえます。

血液が集まる脾臓

脾臓は左上腹部背中側、左腎臓の上後方に存在します。多くの血液が流入するため、暗褐色をした臓器です。表面は皮膜に覆われており、内部には脾髄があります。脾髄は外側の赤脾髄と中側の白脾髄に分かれます。

赤脾髄は古い血液を処理する場です。脾洞と呼ばれるフィルターがあり、膜の硬化した古い血球はここを通り抜けられず、マクロファージによって貪食されます。

白脾髄はリンパ節と同様、リンパ濾胞が存在します。ここでナイーブB細胞は、Tfh細胞の助けを借りて、形質細胞に分化します。 脾臓は血液処理とリンパ球分化に関わる臓器です。


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