30分でマスターする「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン」

この教材を担当したのは?

文責:半田千尋

金融会社営業職を経て特許事務所へ転職。医療機器関連の特許を多数担当する。医療専門出版社SCICUSを経由し、2018年よりメディカル業界唯一のMR研修専門情報誌『Medical Education for MR』編集長を務める。

この講義で伝えたいこと

2019年4月の「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン」(以下、「情報提供ガイドライン」と呼ぶ)の適用開始から、2年以上が経過しました。MRの皆さんは、情報提供ガイドラインに関する研修をこれまで一度は受けていることでしょう。
 情報提供ガイドラインには、適切な情報提供活動を実施するための社内体制の整備や業務記録の保管など、医薬品製造販売企業に対する遵守事項も含まれているため、ガイドラインの内容をすべて頭に入れようとすると、実際のMR活動で必ず理解しておかなければならないことが薄れてしまいかねません。
 そこでこの講義では、MRの日々の情報提供活動にぐっと焦点を絞り、ガイドラインの内容をより平易な表現でコンパクトにまとめ、実例を用いたトレーニングを中心に展開していきます。

MR視点でのガイドライン要約

まずは、情報提供ガイドラインを、MRの情報提供活動に焦点を絞って、再確認していきます。

情報提供活動の「4つの要件」と「7つの禁止行為」

まずは大原則として、MRは、医薬品の適正使用のために必要な情報として、添付文書に記載された禁忌に関する情報、医薬品リスク管理計画(RMP)に関する情報を適切に提供しなければなりません。

MRの情報提供活動の大原則

MRの情報提供活動の大原則

厚生労働省「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン」 より編集部作成

そのうえで、情報提供活動の「4つの要件」と、「7つの禁止行為」が定められています。

「4つの要件」は、こちらです。

販売情報提供活動は、次に掲げる要件を全て満たすものであること。

  1. 提供する医療用医薬品の効能・効果、用法・用量等の情報は、承認された範囲内のものであること。
  2. 医療用医薬品の有効性のみではなく、副作用を含む安全性等の必要な情報についても提供し、提供する情報を恣意的に選択しないこと。
  3. 提供する情報は、科学的及び客観的な根拠に基づくものであり、その根拠を示すことができる正確な内容のものであること。その科学的根拠は、元データを含め、第三者による客観的評価及び検証が可能なもの、又は第三者による適正性の審査(論文の査読等)を経たもの(承認審査に用いられた評価資料や審査報告書を含む。)であること。
  4. 販売情報提供活動の資材等に引用される情報は、その引用元が明記されたものであること。また、社外の調査研究について、その調査研究の実施や論文等の作成に関して医薬品製造販売業者等による物品、金銭、労務等の提供があった場合には、その具体的内容も明記されたものであること。なお、社外の調査研究については、「臨床研究法」、「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」その他これらに準ずる指針等を遵守したもののみを使用すること。
厚生労働省「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン」より

「7つの禁止行為」は、こちらです。

不適正使用又は誤使用を誘発しないよう、販売情報提供活動において次に掲げる行為をしないこと。

  1. 虚偽若しくは誇大な表現又は誤認を誘発させるような表現の使用その他広告規制において禁じられている行為をすること。
  2. 承認された効能・効果、用法・用量等以外の使用方法を推奨すること。
  3. 科学的又は客観的な根拠なく恣意的に、特定の医療用医薬品の処方、使用等に誘引すること。
  4. 他社製品を誹謗、中傷すること等により、自社製品を優れたものと訴えること。
  5. 疾患の罹患や疾病の症状を過度に強調し、不安を煽ること。
  6. 一般人向けの疾患啓発において、医療用医薬品による治療(診断及び予防を含む。以下同じ。)のみを推奨するなど、医療用医薬品による治療以外に治療の手段がないかのように誤認させること。
  7. その他医療用医薬品の不適正使用又は誤使用を誘発させるおそれのある表現を行うこと。
厚生労働省「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン」より

「4つの要件」と「7つの禁止行為」を要約するとこうなる

これら「4つの要件」と「7つの禁止行為」は当然、いずれも遵守すべきものですが、非常に長い文章で書かれた事項もあるため、まるまる頭に入れておくのは大変です。
 そこで、日々の情報提供活動の場で特に意識しておく事項をピックアップし、シンプルな言葉でかつ短い文章にまとめたものがこちらです。これだけは必ず、頭に入れておいてください。

「4つの要件」と「7つの禁止行為」の要約

  • 提供する情報は承認の範囲内に限る。
  • 有効性だけでなく副作用情報についても提供する。
  • 提供する情報は科学的・客観的根拠に基づく内容である。
  • 虚偽や誇大な表現、誤認を招く表現をしない。
  • 承認外の使用方法を推奨しない。
  • 科学的・客観的な根拠なく恣意的に特定の医薬品の処方・使用に誘引しない。
  • 他社製品を誹謗・中傷して自社製品を優れていると訴えない。
  • 不適正使用や誤使用を招くおそれのある表現をしない。

編集部作成

「3つの積極的にするべき行為」

なお、情報提供ガイドラインには「4つの要件」と「7つの禁止行為」とは別に、「3つの積極的にするべき行為」が掲げられています。

販売情報提供活動においては、積極的に次に掲げる行為をすること。

  1. 試験研究の結果に加えてその試験方法も示すなど、正確な理解を促すために必要な情報を提供すること。
  2. 比較試験では、優越性試験、非劣性試験等の試験の設計及びそれに基づく結果を正確に明示すること。また、優位性を示せなかったことなど、医療用医薬品の品質・有効性・安全性に関し、ネガティブな情報についても提供すること。
  3. 厚生労働省や独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)から要求された事項(副作用の発生率の調査等)に関する情報を提供すること。
厚生労働省「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン」より

平易に言い換えると、①試験研究結果は試験方法もセットで提供する、②試験結果はネガティブな情報も提供する、③規制当局が注視している情報も提供する、ということです。つまり、自社製品にとって不利になり得る情報も開示しなさい、ということです。
 たとえば、情報提供を行いたい医薬品が比較試験において、比較薬剤に対し優位性を示せなかったとします。MRはつい、「優位性がない」という試験結果をネガティブな情報と捉えてしまいがちですが、「優位性がないという試験結果」そのものが医療者にとって重要な情報なのです。こうした情報を積極的に提供することで、情報の質があがるだけでなく、情報に対する信頼性が増すことになります。

医療者が問題視した情報提供事例

ここからは、この情報提供は問題があるのでは?と医療者から報告があった実際の事例をもとに、問題点がどこにあるかを検証していきます。

問題事例①

問題事例①は、海外のガイドライン情報などを踏まえて、国内での承認範囲を逸脱する効能・効果を紹介した事例です。

モルヒネ同様に、呼吸困難症例や咳嗽症例への効果が期待できる、モルヒネと異なり代謝物に活性がないことから腎機能低下の呼吸困難患者では第一選択薬になりうる

「販売情報提供活動監視事業 令和元年度 報告書」より作成

この事例では、


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