医薬品の適正使用とプレアボイド

この教材を担当したのは?

文責:半田千尋

金融会社営業職を経て特許事務所へ転職。医療機器関連の特許を多数担当する。医療専門出版社SCICUSを経由し、2018年よりメディカル業界唯一のMR研修専門情報誌『Medical Education for MR』編集長を務める。

この講義で伝えたいこと

MRのみなさんは、薬剤師へ、プレアボイドを意識した情報提供ができていますか?そもそも「プレアボイド」という言葉を聞いたことがない、という方もいるかもしれません。
 プレアボイドは、医薬品による有害事象を防止・回避する観点から薬剤師が取り組む活動、端的に言えば医薬品の適正使用を目的とする活動です。そしてMRは、医薬品の適正な使用のために存在する職種です。つまり、薬剤師によるプレアボイド活動と、MRによる医薬品情報提供活動は、医薬品の適正使用という共通の目的をもつ活動であるということです。
 この講義を通して、薬剤師が取り組むプレアボイドを知り、プレアボイドを意識した情報提供について考えてみましょう。

本編の前に

本編をはじめる前に、独自に行ったアンケート調査の結果の紹介と、用語の確認をしておきます。

「プレアボイド」についてのアンケート調査

MRの皆さんは、プレアボイドについて、どの程度知っているでしょうか?
 20歳以上の医療業に従事する人へアンケート調査を行ったところ、「知っている」(「知っている(内容をよく理解している)」・「知っている(ある程度理解している)」・「知っている(内容を見たことがある/聞いたことがある)」の合計)と回答した人の割合は15.6%、「知らない(聞いたことがない)」と回答した人の割合は65.5%でした。

「プレアボイド」をどの程度知っていますか。

「ある」と回答した方の割合は15.5%、「ない」と回答した方の割合は80.3%

編集部調べ

「プレアボイド」は、日本病院薬剤師会(以下、日病薬)が提唱したものであるため、医療業のなかでも薬剤師を中心に使われる言葉です。

「プレアボイド」とは

「プレアボイド」は、薬による有害事象を防止・回避する、という意味の言葉を基にした造語です。

プレアボイドとは、Prevent and avoid the adverse drug reaction(薬による有害事象を防止・回避する)という言葉を基にした造語である。

厚生労働省資料 より(赤字:編集部)

これは、ファーマシューティカルケア(※)の推進から生まれた言葉です。服薬指導や薬歴管理、薬物治療モニタリング、副作用モニタリング、薬物血中濃度管理などの薬学的ケアによって、副作用や相互作用、また治療効果不十分といった患者さんの不利益を回避することです。

※ファーマシューティカルケア:患者のQOLを改善する、明確な結果をもたらすために採られる薬物治療を、責任をもって遂行すること。(日本薬剤師会「薬剤師の将来ビジョン」より引用)

「プレアボイド報告」を読み解く

では、ここから、講義の本編をはじめます。

まずは、日病薬が毎年公開しているプレアボイド報告を詳しくみていきます。

プレアボイド報告の数

日病薬は1999(平成11)年より、患者さんの安全管理に寄与(不利益を回避)した事例を、プレアボイド報告として収集しています。
 下の図は、収集開始からこれまでのプレアボイド報告数の推移を示したものです。これまで44万件を超える報告があります。

プレアボイド報告数の年度推移

プレアボイド報告数の年度推移

一般社団法人 日本病院薬剤師会「令和元年度プレアボイド報告の概要」 より作成

下の表は、2019年度の報告数を都道府県別に示したものです。

2019年度都道府県別報告数

2019年度都道府県別報告数

一般社団法人 日本病院薬剤師会「令和元年度プレアボイド報告の概要」 より作成

報告数が1,000件を超えているのは、茨城県、埼玉県、神奈川県、東京都、岐阜県、愛知県、兵庫県、大阪府、島根県、岡山県、広島県、福岡県です。報告数は当然、人口規模に影響を受けますが、これらの都府県はプレアボイド報告制度に積極的に取り組んでいると言ってよいでしょう。

プレアボイド報告の分類

先に説明したように、プレアボイドとは、薬によって患者さんが被る不利益の回避を意味するものです。
 プレアボイド報告には、「副作用重篤化回避」・「副作用未然回避」・「薬物治療効果の向上」という3つの分類があります。
 副作用重篤化回避は、既に発現してしまった副作用を初期の段階で把握し、重篤化することを回避した事例です。副作用未然回避は、副作用の発現を事前に予知し、薬剤師が介入することで副作用を未然に回避した事例です。3つ目の薬物治療効果の向上は、副作用の発現はなく、未然回避もない、しかし、患者さんが本来受けることができる最適な薬物治療の成果を受けられないことを「患者不利益」の一部としてとらえ、それを回避した事例、つまり薬剤師の介入により、治療効果の改善、向上がみられた事例です。

プレアボイド報告の分類

分類 報告対象
副作用重篤化回避 発現した副作用、相互作用等を発見し、薬学的ケアにより遷延化、重篤化を防止した事例
副作用未然回避 副作用、相互作用等を未然に防止した事例
薬物治療効果の向上 治療効果増大に寄与した処方設計事例

編集部作成(参考:日本病院薬剤師会雑誌第52巻5号掲載記事 等)

2019年度のプレアボイド報告の内訳は、副作用重篤化回避が4.9%、副作用未然回避が77.4%、薬物治療効果の向上が17.7%という割合でした。

2019年度プレアボイド報告の分類内訳

2019年度プレアボイド報告の分類内訳

一般社団法人 日本病院薬剤師会「令和元年度プレアボイド報告の概要」 より編集部作成

副作用重篤化回避事例については、日病薬のプレアボイド報告評価小委員会において、薬剤師貢献度と副作用との関連性の確度が評価され、両者とも最高評価の事例は「優良事例」とされます。2019年度の副作用重篤化回避事例に占める優良事例の割合は37.1%(782件/2,107件)でした。
 下の表は、優良事例での発見の端緒の内訳を示したものです。

優良事例報告発見の端緒(重複データあり)

内容 件数 割合
検査値35433.8%
薬歴19418.5%
初期症状指導以外の患者の訴え18818.0%
初期症状指導による患者の訴え16215.5%
フィジカルアセスメント706.7%
その他686.5%
TDM111.1%
合計1,047100.0%

一般社団法人 日本病院薬剤師会「令和元年度プレアボイド報告の概要」 より作成

副作用の発現を発見した手がかりとなったのは、検査値が33.8%と最も多く、次に患者薬歴の参照が18.5%でした。また、初期症状指導以外と初期症状指導によるものを合わせた患者さんからの訴えは33.5%、フィジカルアセスメントが6.7%でした。この結果からは、副作用重篤化回避のためには、正常値と異常値が明確な検査値といった数値化できる情報だけでなく、患者さんの話から得られる情報や、患者さんの身体の状態をよく観察して得られる情報がいかに重要かを再認識することができます。

下の表は、薬物治療効果の向上報告における薬学的介入の項目と割合を示したものです。

薬物治療効果の向上報告における薬学的介入の項目

薬学的介入の項目 件数 割合
疾患の治療3,65147.4%
感染管理1,15415.0%
該当しない90611.8%
その他83310.8%
疼痛管理・治療5497.1%
周術期管理2673.5%
栄養管理1912.5%
不明・記載なし1572.0%
合計7,708100.0%

一般社団法人 日本病院薬剤師会「令和元年度プレアボイド報告の概要」 より作成

薬物治療効果の向上報告総数(7,708件)のうち、疾患の治療、感染管理、疼痛管理・治療に関する介入が多く報告されています。また、介入の評価として患者さんの状態が改善したという報告が47.3%を占めていました。

ここまでみてきたように、プレアボイド報告からは、薬剤師がどのように職能を発揮し、医薬品適正使用に貢献しているかを読み解くことができます。

プレアボイドと医薬品適正使用

医薬品の適正使用とは、的確な診断に基づき患者さんの状態にかなった最適の薬剤、剤形と適切な用法用量が決定され、正確な使用の後にその効果や副作用が評価され、処方にフィードバックされるという一連のサイクルの実現です。
 薬剤師が患者さんの副作用歴、生理機能の低下、医学的処置の影響、薬物血中濃度、薬歴などを考慮して、処方設計支援を行うことで最適な処方となります。そしてこれが副作用の未然回避につながります。薬物治療の効果と副作用は、患者さんからの訴えや臨床症状、検査値などから評価されます。このとき、薬剤師による副作用モニタリングなどで発現した副作用を初期の段階で把握し、薬の中止や変更を行うことで重篤化回避につながります。薬物治療の効果が最大限得られていないと考えられる場合には、その原因を取りのぞいたり処方提案を行うことで治療効果の向上につながります。
 このように、プレアボイドは医薬品適正使用のサイクルがきちんと回るために欠かせない活動なのです。

プレアボイドと医薬品適正使用サイクルの関係

プレアボイドと医薬品適正使用サイクルの関係

厚生労働省「高齢者医薬品適正使用検討会」構成員提出資料 より改変作成

プレアボイド具体事例

次に、プレアボイド報告から、副作用重篤化回避、副作用未然回避、治療効果の向上それぞれの具体事例をみていきます。

副作用重篤化回避の事例

まずは、副作用重篤化回避の事例です。この事例では、腎機能から高マグネシウム血症を疑い、徐脈の悪化の回避、さらに徐脈への対応として検討されていたペースメーカー植込み術の回避にもつながりました。

腎機能から高マグネシウム血症を疑い徐脈の悪化を防いだ事例

患者情報 82歳男性 原疾患/合併症:糖尿病、高尿酸血症、心不全、下肢閉塞性動脈硬化症、慢性腎不全
処方情報
  • インスリンリスプロ注 1日3回
  • インスリングラルギン注 1日1回
  • プレガバリンカプセル 50mg/日
  • クロピドグレル硫酸塩錠 50mg/日
  • ワルファリンカリウム錠 2mg/日
  • リナグリプチン錠 5mg/日
  • フェブキソスタット錠 10mg/日
  • ミチグリニドカルシウム錠 30mg/日
  • フロセミド錠 80mg/日
  • スピロノラクトン錠 25mg/日
  • 酸化マグネシウム細粒 2.0g/日
臨床経過 12/23 救急外来にて徐脈が発見され入院となる。入院時、血清クレアチニン(Scr)1.92mg/dL。以前から服用中の酸化マグネシウム細粒が継続指示となる。
12/25 入院後の心電図モニターで徐脈継続。ペースメーカー植込み術が検討される。
12/26 <薬剤師>慢性腎不全の併存症があり、血中マグネシウム測定を医師に提案。
12/27 採血結果 Scr 2.19mg/dL Mg 3.9mg/dL
<薬剤師>酸化マグネシウムの中止と代替薬としてセンノシドの提案。
12/29 ホルター心電図で心拍数40/分以下の徐脈を認めず、ペースメーカー植込み術の適用にはならないと判断される。
1/12 退院

日本病院薬剤師会雑誌第55巻1号掲載記事 より編集部作成

この患者さんに発見された徐脈は、高マグネシウム血症の初期症状のひとつです。患者さんに慢性腎不全の併存症があったことから、以前から服用しているという酸化マグネシウムによる高マグネシウム血症の副作用が疑われました。薬剤師が血中マグネシウムの測定を医師に提案、検査の結果、酸化マグネシウムの中止と代替薬の提案を行ったことで、高マグネシウム血症の重症化を回避することができました。
 緩下薬である酸化マグネシウムは、腎機能が低下する高齢者では高マグネシウム血症をきたすリスクがあります。酸化マグネシウムによる高マグネシウム血症について、厚生労働省は「医薬品・医療機器等安全性情報」で取りあげたり、「高齢者の医薬品適正使用の指針」で高齢者への使用に注意すべき薬剤にリストアップしたりと、再三にわたり注意を促しています。

【参考】厚生労働省医薬・生活衛生局「医薬品・医療機器等安全性情報 No.328」「1.酸化マグネシウムによる高マグネシウム血症について」

副作用未然回避の事例

次に、副作用未然回避の事例です。この事例では、低血糖などの有害事象を未然に回避することにつながりました。

低血糖などの有害事象を未然に回避した事例

患者情報 80歳代男性 原疾患/合併症:糖尿病、高血圧、脂質異常症、胆石症
処方情報
  • レパグリニド錠   0.75mg/日
  • ミグリトール錠   150mg/日
  • アログリプチン錠  25mg/日
  • ピオグリタゾン錠  15mg/日
  • バルサルタン錠   80mg/日
  • アムロジピン錠      2.5mg/日
  • エゼチミブ錠       10mg/日
  • ロスバスタチン錠     2.5mg/日
  • ウルソデオキシコール酸錠 300mg/日
臨床経過 4/20 初回面談。患者より「薬が多くて飲むのが大変。1日3回や食直前といった薬もあって、減らせませんか?」との訴えあり。
<薬剤師>HbA1c値を確認したところ5.9%と良好な血糖コントロールであったため、もう少し寛容な血糖コントロールでもよく減薬が可能と考えた。服薬アドヒアランスも考慮し、低血糖のリスクがあるレパグリニド錠と、虫垂炎の手術の既往があったことからミグリトール錠の中止を主治医に提案した。また医師と協議した結果、HbA1c値は7.0%未満でのコントロールを目標とすることにした。
4/21 レパグリニド錠とミグリトール錠は中止。患者より「薬が減って飲みやすくなりました」とあり。
4/27 食後血糖値の大きな上昇もみられず退院。退院後、HbA1c値は7.0%未満でコントロールできていた。

日本病院薬剤師会雑誌第54巻9号掲載記事 より編集部作成

速効型インスリン分泌促進薬であるレパグリニド錠は低血糖のリスクがあり、α-グルコシダーゼ阻害薬であるミグリトール錠は開腹手術歴のある患者さんでは腸閉塞などの重篤な副作用を引き起こすことがあります。この患者さんは虫垂炎の手術の既往があったことから、ミグリトール錠を中止し、副作用が発現する前に回避することができました。
 高齢者糖尿病での多剤併用は、低血糖や転倒のリスク因子となるほか、服薬アドヒアランスの低下による血糖コントロール不良の原因ともなります。この事例では、減薬後の血糖コントロールも良好で、服薬アドヒアランスの向上や、医療費負担の軽減という面でも貢献しています。

薬物治療効果の向上の事例

次に、薬物治療効果の向上の事例です。この事例では、発熱性好中球減少症に対する治療の最適化を迅速に行ったことで、薬物治療効果の向上につながりました。

発熱性好中球減少症に対する治療の最適化を迅速に行った事例

患者情報 70歳代女性 原疾患:小細胞肺がん 併存疾患:高血圧症、脂質異常症、糖尿病
処方情報
  • アムロジピン錠5mg 1回1錠
  • アトルバスタチン錠10mg 1回1錠
  • ジャヌビア錠50mg 1回1錠
臨床経過 抗がん剤アムルビシン治療中に急な発熱(38.5℃)で予約外受診し、採血施行。Scr 0.71mg/dL WBC 1,200/µL SEG 10.0%(好中球数 120/µL) 単球 0.4% Hb 12.2g/dL PLT 95,000/µL
発熱性好中球減少症(FN)の診断となり、緊急入院となった。ただちにセフェピム開始(1g 12時間ごと、本日は18時、明日からは6時・18時)の指示となった。
<薬剤師>
FN診療ガイドラインではセフェピム2g 12時間ごとが推奨されている。入院後39.1℃まで上昇、暗緑色の下痢を呈しており緊急性の高い状態と考えられた。ただちに処方医と直接話し、ガイドラインではセフェピム2g 12時間ごとが推奨されていること、下痢を呈しており感染症としての重症度が高いこと、暗緑色の下痢であり緑膿菌が起因菌の場合一晩中に死亡した事例があること、以上より18時投与分から2gへの増量が必要であることを提案し、了承された。
<転機・結果>24時間後には37℃台後半まで解熱し、96時間後には解熱した。

日本病院薬剤師会雑誌第55巻11号掲載記事 より編集部作成

抗がん剤の治療では、白血球の数が減少するため、感染症にかかりやすくなったり、重症化しやすくなります。発熱性好中球減少症の起因菌が緑膿菌を始めとするグラム陰性桿菌である場合、発症後数時間で患者さんが死に至ることがあります。そのため、原因菌の特定前には、緑膿菌をカバーする抗菌薬を最適な投与量で迅速に開始する必要があります。この事例では、薬剤師の処方設計介入により、抗菌薬の投与量不足を回避し、患者さんが最適な薬物治療の成果を受けることができました。

薬局でのプレアボイドと薬薬連携

プレアボイドの取り組みは病院薬剤師によって進められてきました。しかし現在は、薬局においても重要な取り組みのひとつとなっています。
 ここからは、薬局でのプレアボイドの取り組みと、病院薬剤師と薬局薬剤師の連携、いわゆる「薬薬連携」についてみていきます。

プレアボイドへの取り組みが薬局の評価に

近年のかかりつけ薬局・薬剤師推進の動きにみられるように、国は、薬局を「門前から地域へ」と政策誘導していることは、皆さんご存じのことでしょう。
 2018年には、地域医療に貢献する薬局を評価する点数として「地域支援体制加算」が調剤報酬に新設されました。プレアボイドへの取り組みは、この加算を算定する施設基準のひとつに位置づけられました。具体的には、「薬局機能情報提供制度において、『プレアボイド事例の把握・収集に関する取組の有無』を『有』として直近一年以内に都道府県に報告している」必要があります。

地域支援体制加算に関する施設基準

(20) 「薬局機能に関する情報の報告及び公表にあたっての留意点について」(平成29年10月6日付け薬食総発第1006第1号)に基づき、薬局機能情報提供制度において、「プレアボイド事例の把握・収集に関する取組の有無」を「有」として直近一年以内に都道府県に報告していること。

厚生労働省資料 より(赤字:編集部)

 「薬局機能情報提供制度」とは、医薬品医療機器等法の規定に基づき、医療を受ける者、つまり患者さんや地域住民が、薬局を選択する際の判断基準として用いることができるよう、規定する事項について都道府県に報告することを薬局開設者に義務づけるものです。報告された情報は、都道府県のホームページやそれぞれの薬局店舗において、誰でも閲覧できるように公開されます。

薬局機能情報提供制度の概要

薬局機能情報提供制度の概要

厚生労働省ウェブサイト掲載資料 より作成

この都道府県に報告される薬局機能情報のひとつに、「プレアボイド事例の把握・収集に関する取組の有無」が含まれています。調剤報酬での「地域支援体制加算」同様にこれもまた、プレアボイドは地域医療、地域包括ケアシステムのなかで薬局が取り組むべき活動であるという国からのメッセージと言えます。

厚生労働省が実施した調査によると、プレアボイド事例に関する把握・収集を行っている薬局の割合は増加しており、プレアボイドが薬局でも徐々に浸透してきたことがうかがえます。

プレアボイド事例に関する把握・収集の状況

プレアボイド事例に関する把握・収集の状況

「かかりつけ薬剤師・薬局に関する調査報告書(別添1)アンケート調査結果」 より作成

【参考】平成30年度かかりつけ薬剤師・薬局機能調査・検討事業「かかりつけ薬剤師・薬局に関する調査」:調査対象は、抽出後の都道府県ごとの薬局数の構成割合が母集団(全国値)とできるだけ同様になるよう、都道府県ごとに無作為抽出した5,000薬局。調査時期は2018年11月27日〜2019年1月21日。

病院薬剤師と薬局薬剤師の連携で実現するプレアボイド

プレアボイド実現のためには、病院薬剤師と薬局薬剤師のシームレスな連携が必要です。患者さんの入退院時に薬物療法に関する情報共有、処方薬の調整などをどのように対応するか、病院薬剤師と薬局薬剤師(かかりつけ薬剤師)がいかに連携できるかが、鍵となります。

病院薬剤師と薬局薬剤師のシームレスな連携のイメージ

病院薬剤師と薬局薬剤師のシームレスな連携のイメージ

厚生労働省資料 より改変作成

プレアボイド報告のなかで、病院薬剤師と薬局薬剤師の連携によって治療効果向上に結びついた事例を紹介します。

退院後の経過についてかかりつけ薬局へフォローを依頼した事例

患者情報 70歳代男性 原疾患:口腔がん
契機 11/8 口腔がんにて術後化学療法(CDDP+RT)施行目的に入院。持参薬では、がん性疼痛に対してオキシコドン徐放錠10mg/日、疼痛時に頓用オキシコドン散2.5mg/回を使用されていた。
11/9 入院後の初回指導にて、患者より最近は錠剤の呑み込みにくさや食事摂取も思うようにできないこと、安静時痛もNRS:3~4/10程度と増悪傾向を認めており、より鎮痛効果を得たいとの希望を聴取した。突出痛の訴えはなく、オキシコドン散は前回処方より2回使用した限りであった。
介入・転帰 11/9 主治医へ定期薬をオキシコドン徐放錠10mg/日から、フェンタニルテープ1mg/日へ、頓用処方をオキシコドン散2.5mg/回からモルヒネ内服液5mg/回へ変更提案した。その際、オキシコドン徐放錠からフェンタニルテープへの切り替え時は、フェンタニルテープを貼付すると同時にオキシコドン徐放錠1錠(1回量)を服用する必要がある旨を併せて情報提供した。また、液剤への剤形変更を考慮するにあたり、患者の嚥下機能は水の摂取に対するむせこみがないことを確認した。
11/11 提案が採択され処方変更された。
11/13 フェンタニルテープ1mg/日へ変更後、安静時疼痛はNRS:1~2程度と改善され、モルヒネ内服液5mgもむせこみなく服用できたことを確認した。
11/17 退院時、入院中の薬物治療の経過(オピオイドスイッチおよび増量)について、かかりつけ薬局に対して薬剤管理サマリーを作成し、退院後の嚥下機能ならびに疼痛管理を依頼した。

日本病院薬剤師会雑誌第57巻5号掲載記事 より編集部作成 

この事例では、患者さんの退院時に、入院中の薬物治療の経過を薬剤管理サマリーとして病院薬剤師から薬局薬剤師へ情報提供しています。入院中に、嚥下機能の低下など患者さんの状態に合わせた剤形選択とオピオイド鎮痛薬の用量調節によって、服薬アドヒアランスの維持と適正な疼痛管理が実現し、退院時にその経過を薬剤管理サマリーとして薬局薬剤師へ情報提供することで、退院後の継続的な薬物療法の管理につなげることができた事例です。

厚生労働省による医療機関薬剤師への調査によると、患者さんの入院時に、薬局に対して情報提供を依頼することが「ある」割合は41.5%(n=402)でした。そして「ある」と回答した医療機関へ薬局から情報提供を受けた効果を尋ねたところ、入院中の適切な薬剤管理につながった、薬物治療の安全性が高まったという、プレアボイドにつながる効果がみられました。

患者の入院時に薬局から情報提供を受けたことによる効果
(複数回答)

患者の入院時に薬局から情報提供を受けたことによる効果

厚生労働省資料 より作成

患者さんの退院時に、薬局にお薬手帳以外で患者情報等を提供することが「ある」割合は、31.6%(n=399)でした。そして、「ある」と回答した医療機関へ具体的にどのような患者情報を提供するかその内容を尋ねたところ、服薬支援に関する情報が最も多く、次いで、入院時に中止した薬剤に関する情報、入院時に発症した副作用情報・アレルギー情報、入院時に使用した主な薬剤の情報や指導内容、という結果でした。このほかの回答内容もすべて、薬局でのプレアボイドのために必要な情報です。

患者の退院時に薬局にお薬手帳以外で患者情報等を提供する内容
(複数回答)

患者の退院時に薬局にお薬手帳以外で患者情報等を提供する内容

厚生労働省資料 より作成

2020年度診療報酬改定では、地域における継続的な薬学的管理指導を支援することを目的に「退院時薬剤情報連携加算」が新設されるなど、病院薬剤師から薬局薬剤師へ向けた連携が求められています。

【参考】退院時薬剤情報連携加算:入院前の処方薬の内容に変更、中止等の見直しがあった場合について、退院時に見直しの理由や見直し後の患者の状態等を文書で薬局に対して情報提供を行った場合、「退院時薬剤情報管理指導料」に当該加算60点を算定できる。

薬局から医療機関への情報提供

薬局から医療機関への情報提供では、「トレーシングレポート(服薬情報提供文書)」があります。トレーシングレポートとは、プレアボイド(副作用の重篤化・未然回避、治療効果向上)ではなく、疑義照会とも異なり、緊急性は低いものの薬物療法の有効性・安全性のために医療機関に伝えておいたほうがよいと薬局薬剤師が判断した患者情報を伝えるものです。患者さんの細やかな状態の変化や日常生活で困っていること、薬物治療に関して患者さんから受けた相談など、次回の診療の際に役立ててもらうために使用します。
 報告には厚生労働省が用意する様式(「患者の服薬状況等に係る情報提供書」)を用いる場合もありますが、独自の様式を作成している医療機関もあります。

【参考】薬局から医療機関への情報提供は、「服薬情報等提供料」という調剤報酬で評価される。医療機関から求めがあった場合は30点、患者またはその家族から求めがあった場合または薬剤師が必要性を認めた場合は20点を月1回算定できる。

厚生労働省による医療機関への調査によると、約3割の施設が、薬局からのトレーシングレポートを受け取るための専用窓口を設置しています。

薬局からのトレーシングレポートを受け取るための
専用の受付窓口を設置しているか。

薬局からのトレーシングレポートを受け取るための専用の受付窓口を設置しているか。

厚生労働省資料 より作成

医療機関へトレーシングレポートが送られてきたとき、病院薬剤師がどのように関わっているかという調査では、最も多かった回答は「迅速な対応が必要な情報である場合、医師へ伝達・連絡する」というものでしたが、そのほかの回答をみても、トレーシングレポートの内容をいったんは病院薬剤師が確認していることがわかります。

トレーシングレポートに対して施設の薬剤師はどのように関わっているか
(複数回答)

トレーシングレポートに対して施設の薬剤師はどのように関わっているか

厚生労働省資料 より作成

薬局への調査によると、患者の服薬情報等を情報提供書等の文書で医療機関に提供したことがある薬局は、全体の47.1%でした。

患者の服薬情報等を服薬情報等提供料に係る情報提供書等の文書で
医療機関に提供したことがあるか

患者の服薬情報等を服薬情報等提供料に係る情報提供書等の文書で医療機関に提供したことがあるか

「かかりつけ薬剤師・薬局に関する調査報告書(別添1)アンケート調査結果」 より作成

しかし、「ない」と回答した薬局に対してその理由を尋ねたところ、「文書以外の手段(地域医療情報ネットワーク、口頭、電話等)で情報提供しているため」という回答が37.2%あり、必ずしも文書の形式にこだわらず、医療機関との連携をはかっている薬局が多くあることがうかがえます。

医療機関に対して患者の服薬情報等を示す文書を提供していない理由
(複数回答)

トレーシングレポートに対して施設の薬剤師はどのように関わっているか

「かかりつけ薬剤師・薬局に関する調査報告書(別添1)アンケート調査結果」 より作成

MRの皆さんへ

薬剤師が取り組むプレアボイドは、医薬品の適正使用に貢献するものです。医薬品の安全管理と適正使用を基盤とし、患者さんへ安全な薬物療法の提供、よりよい薬物療法の提供を目指すものです。これは、MRが目指すものと同じです。
 MRはプレアボイド報告に直接的に関与することはありませんが、同じ医薬品の適正使用という目的のため、薬剤師がどのような取り組みを行っているのか、知っておく必要があります。また、プレアボイドの実現のためには適切な医薬品情報の提供・収集が欠かせません。プレアボイドやそのための薬薬連携につながることを意識して、日々のMR活動を見直してみましょう。

MRの皆さんへ

  • 薬剤師が取り組むプレアボイドは、患者さんへ安全な薬物療法の提供、よりよい薬物療法の提供を目指すものであり、MRが目指すものと同じ。
  • MRは同じ医薬品の適正使用という目的のため、薬剤師がどのような取り組みを行っているのか知っておく必要がある。
  • MRの日々の情報提供活動もまた、プレアボイドにつながる活動である。

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